介 護

介護について   初めて車いすを使う人のために   口腔ケアについて   排尿の訓練とケア   便秘・排便のケアについて

■介護について

 40歳以上の脳血管性の脳損傷(脳卒中)および65歳以上の脳損傷による介護は介護保険の対象になります。
 それ以外の脳損傷による介護は、障害者福祉の対象です。
 また、高次脳機能障害のみの障害に対する介護は、高次脳機能障害(器質性精神障害)としての精神障害者のためのサービスを受けることが可能です。
 さらには、 また、おおむね18歳以下に発症した脳損傷は、知的障害と同様の教育や療育サービスを受けることができます。

 まず介護する上で、可能な限り、様々なチューブを外すことが何より重要です。気管切開、PEG(胃ろう)、中心静脈カニューレ、点滴、バルーンカテーテルなどは、 外す努力が必要です。もちろん、いかに専門家でも、すべてが外せるというものでもありません。また、外さない方が生命を維持しやすいこともあります。 その上で、食事、排泄、入浴、更衣、歯磨き(口腔ケア)をリハビリの視点を持ちつつ、ヘルパーなどの手を借りながら、次第に家族、そして本人へと移行していきます。

 三好春樹は、元は特養の介護士からPTとなって老人介護の実践を積んできました。彼の著書はたくさんありますし、研修会も盛況のようですが、以下の本は老人介 護だけでなく脳損傷者の介護にも応用可能なものが多くあります。とりわけ「3身体障害学」はパーキンソン氏病や片麻痺の患者への介護を中心に書かれており、特に 参考になります。
 「1関係障害論」、「2生活障害論」、「3身体障害学」、「4介護技術学」いずれも雲母書房 1997


 「ワンポイント介護」―介護の基本、体の動かし方から、入浴、排泄、口腔ケアまで、NHKが動画を使ってわかりやすく解説しています。しかも実技と解説を脳損傷者看護の第一人者 で、「あなたの声を聞きたい」以来熱烈なファンの多い紙屋克子教授が担当しているのもうれしいところです。
       http://www.nhk.or.jp/fukushi/one_kaigo/

 「新しい介護」―ついに、太田仁史、三好春樹先生監修による介護の本の決定版、究極の実践ケア、完全図解の「新しい介護」講談社 2003年が出ました(右)。 排泄、入浴、口腔ケアなど、本人の自立という方向に立って、ケアしながらのリハという視点を忘れずにまとめられています。 これ一冊で介護は万全、是非一冊備えておきたいといえばあまりに宣伝にすぎるでしょうか。

 救急病院での入院、そしてリハビリ病院での入院がある程度経過すると、多くの人は自宅での介護が始まります。介護は一人でやりすぎると介護者の負担にもなり、 本人の自立心を損ねますし、そうかといって何もかもヘルパーさんに任せることはできません。その兼ね合いが難しいですね。
 障害者、老人虐待が問題になっていますが、在宅介護によるストレスからついということも多いのではないでしょうか。
 以下に米国介護者協会の10か条を載せました、参考にしてください。

家族介護者(ケアギバー)のための10か条

  1. あなた自身の人生を大切にしましょう。あなたの愛する人の病気や障害を四六時中あなたの人生の中心においてはなりません。

  2. 自分に優しくすることを忘れないこと。自分を愛し、誇りを持ち、価値あるものと思うこと。あなたは厳しい仕事をしているのですから、あなたのため だけの充実した時間を持ちましょう。

  3. うつ病の兆候があるなと思ったら、迷わず必要な専門家の援助を受けましょう。

  4. 援助の申し出は、遠慮せず受けしましょう。そして、してほしいことをはっきりと言いましょう。

  5. 愛する人の問題を学習しましょう。情報はあなたに力を与えます。

  6. 気遣うことと、自ら介護することは違います。さまざまな機器の利用を検討しましょう。そして愛する人の自立を促進しましょう。

  7. 自分の勘を信じましょう。進むべき方向は大きく間違わないでしょう。

  8. あなたが失ったものを深く悲しんだ後には、新しい夢を見ることが大切です。

  9. 介護者として、市民として、自らの権利を主張しましょう。

  10. 他の介護者からの手助けを受けましょう。一人ではない、ということを知ることは大きな力となるでしょう。

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遷延性意識障害状態(植物状態)にある人のお世話

ohta.jpg  地域リハの第一人者で、「心にふれる」、「芯から支える」、「かばい手の思想」などの、高齢者、障害者への思いやりにあふれるエッセイでも知られる太田 仁史、茨城県立医療大学教授・同大学付属病院院長は、著書「介護予防 −なるな寝たきり、つくるな寝たきり−」荘道社 2000年(右)の中で、 植物状態(遷延性意識障害)のひとの介護について次のように述べています。

 「わたし自身は文明の成熟した社会では包み込んで生きていく思想を模索すべきだとの考えをもっている。すなわち、どのような生命もかけがえのないもの、 (略)すなわちその存在の事実・状態の違いで差別化しないという人権思想の根幹であるという立場である。(略)それは健康でいられる者の義務であるし、 これを捨てると人間生活の仕組みは基本的に組み替えをしなければならなくなる。すなわち、ヒエラルキーのトップにいる者、強い者が生死を含めすべての権 限を持つ社会を容認することになる恐れがあるからである。したがって、以後の議論は当然植物状態の人をお世話するという立場から論じる。」

 「植物状態あるいはそれに近い状態にある人をお世話するとき、何を基準においてお世話の善し悪しを判断するのか、きわめて難しい。わたしは二つのことを その基準におくべきだと考えている。(略)
 まず、人間らしさを示す、最低の線を体について表せば何かということである。それは一部の関節可動域の一定の保持と保清である。清潔は関節の可動域が ある程度保たれていないと不可能である。(略)

  • 口腔内をきれいにすることには顎の関節がある程度動かなければならない。(略)
  • 首がまったく動かないと寝返りをさせにくく、床ずれや肺炎の原因になるし、シーツの交換も不便になる。
  • 肩が体幹にくっついていて離れなくなると、脇の下が不潔になるし、衣服の着脱が困難になる。
  • 指が屈曲変形すると指は開かず不潔になる。爪を切ることもできず、爪が手のひらに食い込むようになると手のひらの皮膚を傷つけてしまう。
  • 股関節が開かないとオムツの交換が不便だし陰部は不潔になる。
  • 股関節や膝が動かなくなると寝返りをさせにくいし、ベッドを上げることもできない。(略)これは日常のわずかな気遣いや、簡単な関節の動かし方を知っていれば介護の中で防ぐことができる。
  • 介護者の無知によっていたずらに廃用症候状態をつくってしまうのは、これからは人権の問題になると考えられる。」

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■初めて車いすを使う人のために

  • 寝ていると、骨のカルシュームが吸収されます。生命の危機を脱した後はできるだけ早期に座る、立つ練習をしてもらいましょう。
  • 長く寝ていて、急に座るのは危険です。看護師さんと相談しながら、血圧低下に気をつけて段階的に座るようにします。
  • 車いすは、まずは病院にあるものや、レンタルを検討します。購入は身障手帳があると補助が出ます。
  • 座り方はPTさんに相談します。腰骨はできるだけまっすぐに、足底は、足置きにしっかりつくようにします。
  • どんな車いすが良いかはPTさんに相談しましょう。
  • 意識がしっかりしない間は、自走用よりはリクライニング機能のある介護用が良いでしょう。
  • 車いすの座面の上に、専用のクッションを敷いて座ります。
  • 慣れない間はずり落ちるので気をつけましょう。ずり落ちないように股を止めるサポータも市販されています。
  • 車いすも少し使っていると、食べ物、尿、汗などで結構汚れてきます。これは,シャワーのお湯と洗剤で洗って乾かしましょう。
  • 尿の多い人は、座面やクッションが尿でぬれることがあります。そんな時は、ゴムの滑り止めを敷いて、その上に平おむつを敷いて座ると万一のときすぐに替えることができます。クッションも洗えるカバーをかけて使います。
  • 平おむつはペットショップで売っているペット用が安価です。
  • 車いすを止めておく時は必ずブレーキを忘れずに。ちょっとした坂、わずかの風で車いすは動き出します。車いすの死亡事故も報告されています。
  • 自分の車いすを作る時には、PTさん、先輩(脊髄損傷の方)、業者などと良く相談して、自分の体にあったものを作ります。
  • 自宅用、外出用と分けて作る人もいます。
  • 車いすは、落ちないように、急な坂を上る時には、前向き、降りる時は、後ろ向きにおります。
  • 階段を持ち上げてもらう時には、一番下にある、しっかりしたフレームを持ってもらいましょう。手すりなどを持つと抜けて落ちることがあります。

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■口腔ケアについて

 口腔ケアの基本は「新しい介護」などの本にも詳しく書かれていますが、しばしば本人が嫌がって、介助者の指や歯ブラシに噛みついてしまうという相談を受けます。 障害者歯科の専門家に聞きました。

 介護者が口腔ケア(口の中をきれいにするために、歯ブラシによる歯磨きや舌ブラシを用いて舌の汚れを取ること) をしようとしたときに、本人が口を閉じ、歯を噛み締めてしまう場合があります。これは、本人にとって、このようなアプローチが「耐えがたいので止めて」というこ との意思表示だと解釈できます。強引なやり方は、かえって逆効果になるようです。
 ふつうの人でも、他の人に口の中を見られたり、口の中をさわられたりするのは気持ちのいいことではありません。 ましてや、意思表示がうまくできない人や、いろいろな意味で過敏になられている場合には、なおさらだと思われます。 それではどうするのがいいのでしょうか。やはり、だんだん慣れていただくことが必要です。

 具体的な方法としては、口の周りを介護者の指で触れることに慣れてもらうことからはじめます。
 次に非常に柔らかい歯ブラシ(ウルトラソフトといわれる毛筆のように柔らかい歯ブラシがあります)から始めます。 まず、唇に触れることに慣れてもらい、さらに口の中に歯ブラシを入れるときには、感覚の鈍いところ、たとえば下の奥歯の外側から始めて(前歯の外側は非常に敏感な ので、そこに触れるのは十分に慣れてからの方が良いでしょう)、まず歯と歯ぐきの境目あたりに軽く当てて、10数えます。この時にはブラシは動かしません。軽く当 てることに慣れてもらうことから始めます。また、最初は歯ぐきを下からすくい上げるような角度がいいでしょう。

 この作業は、洗面所でする必要はありません。透明なコップに半分ぐらい水を入れたのを2,3個用意し、そこで歯ブラシをすすぎながら進めます。

 まず、歯ブラシについた余分な水分はティッシュペーパー等で取り除きます。喉に水が滴って、水が垂れこむのを防ぐためです。 顎の下には、少し厚手のタオルを当てるのもいいでしょう。
 向かい合った姿勢で、右利きの介助者がする場合には、本人の左下の奥歯の外側から始め、ついで右下の奥歯の外側、続いて右上の奥歯の外側、左上奥歯の外側、下の前 歯の外側、上の前歯の外側との順で行います。一度にすべてを完璧にとは思わないでください。まずは徐々に慣れていってもらうのが目的ですので、ゆっくり焦らずに進めてください。 歯の内側は敏感ですし、歯ブラシの当て方をうまくしないと、思わぬところに当たっていることがありますので要注意です。その意味でも小さいヘッドの歯ブラシが望ましいでしょう。
 十分に慣れてもらえるまで、より敏感な舌は、汚れていてもすぐには触れないのが得策です。歯ブラシをする場合には常に声をかけ、することの説明をしながら進める必要があります。 黙っていて、突然、歯ブラシを口に入れるのは、緊張を与え、驚きによって、拒否反応を引き起こす恐れがあります。始めるときには、どこに当てて、たとえば10数える間に何をするかを十分に伝える必要があります。 また、歯を磨くときに歯ブラシを当てる場所の順番は、毎回同じ順序で行います。

 姿勢は座位がよく、できれば一日で一番体調のよい(午前中等の)時に始めてみるのがいいでしょう。また、水とか唾液がのどの奥に(咽頭部の方)に行かないように、首はやや前屈する姿勢がいいでしょう。

 最初できるだけ口腔機能についてよく分っている歯科医師による診断と、歯科衛生士による指導を受けましょう。そのため近所の歯科医院や地元の歯科医師会に、診断・指導をしていただける先生をご紹介してもらわれるのがよいでしょう。

 口腔ケアは、口臭、虫歯の予防だけでなく、肺炎などの予防にも大切です。できるだけ早期に介助者ができるようになりたいです。

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■排尿の訓練とケア

 家族の経験談をまとめました。
  • まず排尿パターンを記録しましょう。時刻と量です。量は大、中、小で良いのではないでしょうか。できればおおよその水分摂取量も書きましょう。

  • 排尿パターンがつかめれば、出そうな時間帯に、洋式トイレ、ポータブルトイレにしばらく座らせます。あまり一杯になるより少し前に座った方がいいようです。

  • 出ればよかったと大喜びしましょう。好きなものを御褒美にあげると強化されるという考え方もあります。

  • リハビリパンツが濡れると、自分で取ってしまうこともあります。しかしそれは、尿が出たことが分かりだした良い兆候です。排尿訓練を始める良い機会のようです。

  • やや重度な障害の人の場合には、尿器を当てて、膀胱を少し押さえると出ます。同じ姿勢、同じ場所を同じように押さえると、だんだん膀胱の張り具合がわかってきます。

  • リハビリパンツにも大量用があります。車椅子まで濡れる場合には、座面にペット用平オムツを敷きます。ペット用が安くて扱い易いです。

  • ベッドの上などで、尿器を当てたまま、しばらく待って出るようになってから、トイレに誘導する方法もあります。ベッドが濡れる場合にはラバーシーツなどでカバーしましょう。

  • 病院では慣れない排尿だったので良く漏らしたが、家に帰ると慣れたトイレなので、自分で言う(行ける)ようになったという人も結構います。

  • 外出時などは、コンドーム型の集尿器があります。ゴムホースで膝の下にあるゴムの袋にためるのですが、脳損傷の方は、脊損の方とは違い、嫌がって自分ではずしてしまうようです。そういうことがなければ、コックを開けて捨てるだけなので便利です。

  • 食後に出るという人が多いようです。食事終了後、必ずトイレに誘導し、排尿を促すと、何度か繰り返すうちパターンが身につくようです。

  • 水の音が刺激になって出ることもあります。

  • 膀胱が一杯になる少し前に出すようにします。あまりあせらず、時間をじっくりかけると出るようになり、次第にそれほど時間もかからなくなります。

  • 歩いて、または手すりなどにつかまってでもトイレに行ける人は行ってトイレでしましょう。

  • 歩けない人は、ポータブルトイレでベッドサイドですることも考えましょう。ポータブルトイレも長く座っていられるものを選びましょう。

  • うまく行きだすと,だいたい排尿のパターンが出来上がってきます。表にして、本人や介護する人みんなにわかるようにしましょう。

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■便秘・排便のケアについて

  〜 掲示板のご意見も含めてまとめました 〜
  • 意識がなかったり、はっきりしないときには、排便を記録することが大切です。排尿のほうには注意をしますが、意外に排便を忘れがちです。

  • 便秘の原因は、運動不足にもあります。寝たきりに注意しましょう。寝るより座る、できればリハで立つ練習などをしましょう。リハにもなり、運動にもそして便秘にも有効です。

  • 下剤の話。自分にあった下剤を探す。あまり変え過ぎると特長がつかめない。便秘の薬には便の水分量を多くして柔らかくして出しやすくするものと、腸の動きを促進して出すタイプとがあります。

  • 排便は座ってするのが原則。引力を利用できます。寝たままは出にくい。

  • 出る前に、出ると言えない人でもサインがあることがある。(例)麻痺した手足が上がる。

  • 介護者による事後処理は、トイレの前に手すりをつけて、立たせてやるとやり易い。

  • 出にくいときは座薬を入れると出易くなる。座薬は医師に事前に処方をして貰っておく。

  • 便の量が少ない、下痢便のようなものだけが少し出るときは、大きな便塊が肛門の上で蓋をしていることがある。そんなときは摘便をする。

  • 便を拭いたり、座薬を入れるときにはゴム手袋が清潔で便利。医療機関などに聞いて、大量購入すると安いです。

  • 摘便は看護婦さんにしてもらうが、そうばかり言っておれないので、習って家族でもやる。

  • 普段から食べるもの、水分量との関係を観察する。

  • 排便訓練のため(便失禁が見られる場合には特に)食事の後などに定期的に一定時間座るようにする。

  • 上で紹介している「新しい介護」に、排便の仕組みやトイレ、リハビリパンツなど詳しく出ています、参考にしてください。

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